ニュースNews
ブログ

【対談】スーパーシティにおけるAPIの活用 -アクセンチュア株式会社 中村 彰二朗氏

●スーパーシティにおけるデータ連携基盤とAPI
●リファレンスアーキテクチャとAPI管理の重要性
などスーパーシティ構想実現に向け、重要なカギとなるAPIについて紹介しております。

アクセンチュア・イノベーションセンター福島 センター共同統括でスマートシティの先駆者でもあるアクセンチュア株式会社 中村 彰二朗氏に「スーパーシティにおけるAPIの活用」というテーマのもとお話を聞きました。
(聞き手 株式会社ブリスコラ 代表取締役 末貞 慶太郎) 
アクセンチュアは、「会津大学とスマートシティの標準API と都市OSに関する共同研究を開始」を発表。この研究にブリスコラも参画し、国内初の内閣府が示すスマートシティリファレンスアーキテクチャに沿ったAPI参照サイトの構築を進めています。

スーパーシティにおけるデータ連携基盤とAPI

末貞)
ブリスコラの今年のテーマとして「スーパーシティ」を重要視しています。アクセンチュアとしてのスーパーシティの取組みを教えてください。

中村氏)
スマートシティに取り組んで、会津で8年半。きっかけは震災復興や地方創生でした。だが震災がなくても東京一極集中問題はライフワークとして是正したいと思っていました。IT業界で学んだことは「フラット、オープン」という思想。日本がそうなっていないということに問題意識を感じています。地方のオリジナリティや、将来やりたいことが「分散」という形でそれぞれ自立し、それらが連携する。これが正しい社会の形だと思っています。地域や市民主導という「分散」になっていく中、スマートシティにおいてAPIというテーマが一番重要になると思います。標準化をしてAPIで連携することで、スケールメリットもだせるし個別最適もできる。そういう社会が一番望ましいと思います。そういった取組の形としてスマートシティがあると思います。


末貞)
スマートシティ/スーパーシティというのは、住民や企業のデータの出し方、自治体においてこの先どのように便利になっていくでしょう?

2_AC.png

中村氏)
これだけに限りませんが、8つの領域があります。これら様々な領域がAPI連携できることで、人の生活を豊かにしていく。そのためにテクノロジーの進化が重要なのではと思います。今回、スーパーシティでは最低でも5つの領域をやらなければならない、ということが提言に入ってきています。なかでも我々が今まで模索してやってきた8つの領域で、これらの領域を全部つないでいくのがスーパーシティにおけるデータ連携基盤の考え方です。そこでもAPIが重要となります。APIによるアーキテクチャになることで生産性が高まり、都市OSの運用が実現できるようになります。その意味でも、本当に標準化し都市間や都市内の横断をやらなければならず、そこでAPI マネジメントが重要になってきます。

これまで、なぜ日本のシステムがバラバラだったのか、という原因を理解することが大事です。
悪意をもって自治体別のシステムができたわけではなく、あくまで各自治体の要望に対し、システムベンダーが個別に作ってきただけなのです。ヨーロッパでは様々なシステムが同じような組織に使われるとき、共通化するところを議論します。そうすることで標準すべき領域が明確になるのですが、日本ではできていなかったのです。
これと同じことをスマートシティでやってはいけないでしょう。これらの意見が国と一致し、日本では初めて標準化をし、これから進めていくことになります。

3_APIManagement.png

スマートシティ/スーパーシティの都市マネジメントの考えと、そこで使う技術のAPIマネジメントも同じ体制になっていくと思います。これまでは行政・国が管理もしくはGAFAといった巨大プラットフォーマーがマーケットを作っていましたが、その時代はそろそろ終わります。「皆のデータを、皆で地域を良くする為に使う」というのがスマートシティだとすると、組織の集合体のようなところが管理していくのが良いと思います。

末貞)
その責任とサービス内容をしっかりと考えなければならない、それがないと運用ができないかもしれないですね。

中村氏)
新たなガバナンス体制に入っているので、一極体制と同じような仕組みが必要でしょう。

末貞) 
スーパーシティ法案の際に国会でも話題になっていましたが、オプトイン/オプトアウトといった住民同意を得るためのやり方と、データが漏洩してしまう、という話が入り交じり、IT業界としてはこれを明確にしていく必要があると思います。そのなかでデータ連携やAPIがでてきますが、そのあたりはどう思われますか?

中村氏)
インフラの観点として、サイバーセキュリティ対策だとか情報漏洩問題は、ITのプロ集団である我々がきっちりやらなければならないでしょう。
もうひとつ大きな概念でいうと「ガバナンス問題」があります。例えば、これまでGAFAとユーザの二極構造でした。そしてGAFAに預けたデータが自分の知らないところで使われる、ということに対して色々な議論がありました。

オプトインを考えると、市民もプロジェクトに参加する「市民参加型」であり市民も大きな役割を担い、行政とはフラットな関係性になります。行政と市民という二極ではなく、一極になるのでこのガバナンス問題をもう一度ゼロから議論する必要があると思います。極端なことをいうと、市民も街を良くするためにデータを出すという前提で情報漏洩がおきることへの覚悟と、新しいガバナンス体制でやっていく、という議論をもっと進めていかなければならないと思います。

末貞)
IT業界からすると同意を得たアカウントをしっかり管理し、データをコントロールしながら、アクセスを管理していくというのはそこまで難しくないと思われます。

中村氏)
セキュリティ問題やITの脆弱性ばかりがクローズアップされ、話が本質論にいかないのです。今まで上の立場だった便利ツールであるITを、人間の方が上になるようにしていく、という考え方に行くべきだと考えます。

リファレンスアーキテクチャとAPI管理の重要性

末貞)
貴社が推進しているプロジェクトの中でもリファレンスアーキテクチャを定義されていましたね。

中村氏)
スマートシティでアーキテクチャを大きくわけると、ルール・モデル・運用体制といった「都市マネジメント」と、セキュリティ・APIといった「IT」のテクノロジーの2つがあります。
都市OSは特にデジタルをやっている人にとっては当たり前の世界です。ただし日本の公共系のエンジニアにとって、デジタルは新しいものになります。これから日本や地域をデジタル化していくときに全員が同じ理解に立つために、リファレンスアーキテクチャを作りました。ぜひ政府・国にやってほしいのは、その方針を決めそれを徹底し、日本が完全にオープン化・標準化されて、どの街に住んでもユーザからすると全て同じUX(ユーザエクスペリエンス)になることに期待したいと思います。

末貞)
アーキテクチャからAPIという言葉がメジャーになってきており、そこで、APIがオープンになった時に何が必要か、という点にフォーカスしているのですが。

中村氏)
法案にAPIと書かれる時代になり、日本も一歩進んだ感じがします。

末貞)
APIをわかってもらうというフェーズになると、どのようなAPIがあるのかをみていかなきゃいけない。会津若松ではAPIがポータルで表現されており、とても進んでいると思います。その取り組みのきっかけは何でしょう?

4_APIvalue.png中村氏)
オープンデータを始めるときに、市役所が持っているデータを利活用可能なデータ形式にしてオープンデータにするのですが、これらのデータがあり、APIが標準化されていれば様々な人が参加してアプリケーションを作っていけるという「Open Innovation」 というのを考えています。
例えば、現在のようなコロナを経験しているときに、そのデータを使って何ができるか?と考えた時、データがあり、APIが公開されている、発想と同時にアプリケーション・プログラムを作れたら...そのような環境を作れたらと思い始めたのがAPIの標準化・オープン化です。

末貞)
この先、APIとの連携というのも深堀していく必要があると考えています。APIでデータが取れる世界が実現したときに課題も生まれてくる。今はデータを取ることにフォーカスしているが、当たり前のように全国からデータがとれるようになった時、これをどうするのかというのが「相互運用」だと思います。今後、標準化されたAPIを開発と運用の観点を想定して進めていかなければと思います。

中村氏)
複数都市間がつながり、自身のデータが他のデータと一緒にされたとき、取引先はどうなっているのか、という議論がまだ整理できていません。今後スーパーシティで認定された地域がデータ連携をはじめ、そこで合意形成やルール・マネジメントを作り、テクノロジーを活用して実現していく必要があると思います。

末貞)
APIがよりシンプルに、よりしっかりとコントロールできる仕組みが必要だと思います。APIマネジメント/API管理の層が全体にありそこにアクセスした上でAPIをとり、しかもオプトインされた後の住民同意を得た認証データを合体し、管理していくということが大事かと思っています。

中村氏)
いずれ、APIマネジメントを誰がやるのか?という議論になるでしょう。

5_APIYakuwari.png

末貞)
多くのAPIが存在するようになり様々な混乱状態を招く前に交通整理をする必要があります。APIの重複をなくすとともに、APIのアクセスを統一することで通ったログを後で確認できるよう管理していかなければならないでしょう。 
そのAPIの管理を担うのがAPIゲートウェイですが、加えてAPIの標準化、標準化規約に基づいたAPIの設計、実装されたAPIの公開が一体となって提供される仕組みが必要です。

中村氏)
我々OGCメンバーはオープンイノベーションの上でフラットな議論をし、Open、Flat、Connected、Collaboration、Shareこの5つのプロセスをスーパーシティ/スマートシティの領域で実現しない限り、成功しないだろうと思っています。

末貞)
ブリスコラとしては「オープンイノベーションの世界でビジネスも成り立つ」というテーマを起業理念として進めてきました。APIを通してビジネスでもオープンな世界が作れるということを、アクセンチュア様と協業し、またOGCとしても提言していき、より加速していきたいと考えています。


Nakamura.png中村 彰二朗 氏
アクセンチュア・イノベーションセンター福島 センター共同統括

1986年よりUNIX上でのアプリケーション開発に従事し、その後、政府自治体システムのオープン化と、高度IT人材育成や地方自治体アプリケーションシェアモデルを提唱し全国へ啓発。2011年1月アクセンチュア入社。「3.11」以降、福島県の復興と産業振興による雇用創出に向けて会津若松市に設立したイノベーションセンターのセンター長に就任した。
現在は、日本が抱えるナショナルアジェンダをデジタライゼーションにより、どのように解決できるか、会津地域を実証フィールドと位置づけ、実証した成功モデルを地域主導型スマートシティプラットフォーム(都市OS)として他地域へ展開、各地の地方創生プロジェクトに取り組んでいる。

Suesada.png末貞 慶太郎
株式会社ブリスコラ 代表取締役 

外資金融機関を経て、2000年よりIT業界にて、海外のハードウェアやEAIソフトウェアを販売。2008年より株式会社インターネットイニシアティブの事業企画担当として、松江のPUE1.1のコンテナデータセンターなど多数のプロジェクト立ち上げを担当。2010年6月株式会社ブリスコラを起業し、クラウドにフォーカスした戦略コンサルティングやIoTプラットフォームサービスの提供を開始。2015年日本で初めてAPIマネジメントのOSSツール「Kong」をベースにしたサブスクリプションサービスを展開。また米国Kong社(旧Mashape社)と世界初の代理店契約を締結。APIを活用した先進的なシステム導入実績を重ね現在に至る

CONTACT US

ブリスコラの提供する製品・サービス、
APIビジネスについては
こちらからお問い合わせ下さい。

お問い合わせはこちら