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【対談 第1部】これからのインターネットとAPI - 日本のAPIを支える、マイクロ・データセンター戦略とエネルギーとは -

株式会社インターネットイニシアティブ 常務執行役員 山井 美和氏

※第1部・第2部ともに、対談のテキスト原稿は、こちらのPDFでもご覧いただけます。

※第2部のコンテンツはこちらからご覧ください。

株式会社インターネットイニシアティブ 常務執行役員 山井 美和氏をお迎えし、「これからのインターネットとAPI ~日本のAPIを支える、マイクロ・データセンター戦略とエネルギーとは~」と題し、ブリスコラ 代表取締役の末貞と対談を行いました。

日本のネットワーク基盤を支える国内トップクラスの独立系ISPである株式会社インターネットイニシアティブのこれまでの取組みや、山井氏の豊富なご経験をもとに、インターネットの変遷がもたらしたシステム環境の変化、そして今後さらに活発化するであろうAPIを活用したシステム、またデータセンターの在り方について、海外ベンダーの動向を踏まえ日本における現況とこれからの展望を語って頂きました。


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【 TOPIC 1 】 ISP(Internet Service Provider)について

株式会社インターネットイニシアティブ(以下、IIJ)様は日本のインターネットの基盤を支える国内独立系ISPのトップベンダーであり、通信の基幹であるバックボーンネットワーク事業においても、長きにわたり時代を先取りし強固なインフラを作ってこられました。日本におけるISP業界の最新状況、また、これからのインターネットについてご見解をお聞かせください。

コンテンツの重要性

IIJ 山井氏)
IIJは日本企業として最初に商用サービスを提供し、日本におけるインターネットを支える重要な位置づけにある企業であると自負しておりますが、時代の流れとともに、コミュニケーションの中身が新しいものに変わってきていると感じています。もともと、インターネットはコンピュータ間の通信の仕組みのひとつでしたが、その使われ方が進化しコンピュータが手のひらで動くようになり、通信する中身も電子メール、動画配信また商取引など幅広く変化し、コンテンツが非常に重要な時代になってきていると感じています。現在、「人と人」のコミュニケーションだけではなく、IoTといわれる「人と機械」、「機械と機械」が通信の中身ということで、これからのインターネットのコミュニケーションというのは、コンテンツが非常に重要になってくると認識しています。

進行) 
今後、ブリスコラのビジネスの主軸であるAPIが非常に増えてくると予測されています。インターネットとAPI、どのような相関性が生まれるかご意見をお聞かせください。

末貞)
現在の日本企業のAPIシーンというのは、社内のシステムに閉ざされている仕組みをマイクロサービスに変える、というAPIの在り方の方が先行していると感じます。我々もスマートシティもしくは企業のDXに関わるビジネスをさせて頂いていますが、「オープンAPI」というインターネットを介してAPIを公開していくという流れが今後多くなってくると思います。山井様のお話にあった「コンテンツ」がAPIに置き換わる形が、これからの潮流だろうと思います。

API Managementによるガバナンス強化

末貞)
アプリケーションを含めて「コンテンツ」という時が多いのですが、APIのレイヤーでシステムを切ってしまうとAPI自体がむきみにでることになり誰でもアクセスできてしまいます。そのため、APIのアクセスをいつだれがどこにどうやってアクセスさせるか、という「ガバナンス」によりAPIをコントロールする必要があります。そこが担っている重要なソフトウェアとしてAPI Managementがあり、これを含め外部との関係を管理する仕組みとしてAPI Gatewayがあります。API Gateway自体を環境に依存することなく、誰でも導入できる環境を作っていかなければならない、と改めて認識しています。

【 TOPIC 2 】 海外クラウドベンダーの日本への展開

昨今、インターネットの発展とともに、クラウドの導入が非常に盛んになっています。またIaaS (Infrastructure as a Service)の市場も「Amazon Web Services(AWS)」「Google Cloud Platform(GCP)」「Microsoft Azure」といった米国大手企業のサービスを筆頭に、非常に大規模な市場になっています。このような海外企業の日本への展開・動向について、IIJ様としてどうとらえてらっしゃるかお話をお聞かせください。

クラウドベンダー 各社共存による発展

IIJ 山井氏)
IIJでは、インターネットサービスのその先の自社クラウドサービス「GIO」を持っており、他社のクラウドサービスと閉域網で接続できるサービスも提供しています。これはまさにインタークラウド接続であり、複数のクラウドサービス事業者と強固な接続を持っている弊社だからこそ、実現できることでもあります。また、ISP同士がIXで接続していた時代と同じように、今、私たちがデータセンターを構えている千葉ニュータウン地区ではAWS、Google等、様々なクラウド事業者が進出してきており、まさに千葉ニュータウン地区そのものがクラウド事業者のエクスチェンジになっているといっても過言ではないと思います。ただ、これを脅威として考えるというよりもチャンスとして考え、共に共存して発展させるという流れになっていくと考えています。ISPといわれる事業者がBGPという標準化されたプロトコルでトラフィック情報を交換し、それにより通信が行われているのですが、今後はこの一歩上のレイヤーに入り、クラウド事業者同士が相互接続する形を目指していくだろう、と考えています。

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進行)
日本における「APIによるデジタル戦略」はどのようにお考えでしょうか?

API Gateway 導入の環境

末貞)
米国大手Google、AWS、Microsoft等の日本法人がIaaSとして提供しているサービスメニューのレベルは、完璧な状態まできていると思います。今はIaaS上でシステムを作りWEBで提供するという形が多いですが、その上のレイヤーはAPIのレイヤーで一度システムを切り離し設計していく形が増えてきており、外資大手3社のクラウドベンダーもこの点に気づいていると思います。また、日本ではオンプレで動かしているお客様も多く、さらにその方たちがAPIのトレンドにも着目しており早い動きをされています。

APIをインターネット上で公開していく状態になると、そのAPIを守るAPI Managementを含めたAPI Gatewayを、インフラを選ばずにどこでも動かせる環境というのが日本国内に必要になると思っています。IaaSのクラウドサービスについているAPI Management機能・サービスを利用してもよいのですが、将来、どのくらいのAPI数・アクセス数になるか予測できない状況の中で、APIのアクセス数やAPI数で課金され高い金額体系に陥る心配から前に進めない企業が多いのが実態です。

「BAMs Series」の提供 ~OSSを活用したフルライフサイクルAPI管理製品~

弊社はオープンソースのKongを使った独自の価格形態のAPI Managementを提供しています。クラウドや自社のオンプレでAPI管理の環境を作る企業、また各種サービス事業者が自社APIをサービスとして公開する企業、など様々な環境をサポートできるよう適切な「選択肢」を日本企業に届けていきたいと思っています。OSSを活用しているという点が注目すべき点と思うのですが、我々が扱っている米国Kong社のOSSの「Kong Gateway」は、GartnerのMagic Quadrantでリーダーポジション、さらにVisionのエリアでトップを走っています。OSSであるというのは、無償のソフトウェアということだけではなく、エンジニアが育てたいという思いをもち、OSSのソフトウェアを改良しより良い製品へと進化させています。その潮流にのるKongと日本のマーケットを知る我々のナレッジを組み合わせ、「BAMs Series」という製品を提供しています。これまで、お客様に非常にご好評をいただいており、特にオンプレで世界を目指すような企業が、APIがこの先爆発的に増えることを理解し、柔軟な価格体系で導入できる我々の製品を導入しビジネスを進めてらっしゃいます。

【 TOPIC 3 】 データセンターのエネルギー戦略について

山井様はデータセンター事業を統括されており、コンテナ型データセンターや電力消費の効率化を実現したデータセンターの建設プロジェクト等もご担当されていたかと思います。データセンターの電力使用効率の指標でもあるPUEモデル、RE100 といったエネルギー効率の部分について、お話をお聞かせいただけますでしょうか。

PUE目標数値の達成とエッジコンピューティングへの適用

IIJ 山井氏)
日本でも先日改正された「省エネ推進法案」において、PUEという言葉が初めて定義され、理想である1.4以下を目指すという方針が政策にも反映されるようになりました。IIJとしては、自社データセンターでは既にPUE1.4以下を達成しており、今後はこれらをエッジコンピューティングの基盤にも適用できるように考えています。IIJのネットワークの特徴として、分散した配置ができるということでエッジコンピューティングの基盤においてもPUE1.4以下、目指すべきは1.2が実現できるような構想で、今後データセンターの整備を進めようと考えています。

デジタルコンプレックス構想

先日、記者発表で「カーボンニュートラルデータセンターの取組み」ということで、今後のロードマップを発表しています。その中でも、分散化されたデータセンターで非常に高いPUEを示すということで、それらをひとつの大きな仮想的なデータセンターのような位置付けでとらえた「デジタルビジネスコンプレックス」という構想をもち、今後のデータセンターの整備を進めようと思っています。
非常に重要なことは、海外企業の多くはRE100、CDP(※1)、SBTi(※2)という環境対策に非常に力を入れており、各企業においても数値目標を掲げそれを実現することが投資家に対する責任でもある、という時代になってきており、我々としてもそこにビジネス的に貢献できるものは何か、を考えなければいけないと思っています。

※1 CDP  Carbon Disclosure Project(カーボン・ディスクロージャー・プロジェクト)企業や自治体の環境に与えている影響についての情報収集・開示システムを運営する情報の提供を行うことを目的とした国際的なNGO。
※2 SBTi  Science Based Targets initiative CDP、国連グローバルコンパクト、世界資源研究所(WRI)、世界自然保護基金 (WWF) の連合体

蓄電池の活用と環境対策

特に我々が注目しているのが蓄電池の技術です。現在では、送配電網に全国が同期するという同量同時規制という中で動いており、その送電網に蓄電池を設置することで、不安定な再生可能エネルギーを充分に受け入れられるような取組みも進んでいます。我々のデータセンターでは大容量の蓄電池を置くことで、そうしたピークカット/ピークシフトのような動きもできる、ということを実証してきておりこのような技術をより活用し、世の中で進む省エネルギー・環境対策に、積極的に取り組んでいくという姿勢でおります。

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ブリスコラとしての具体的な取組みについてお聞かせいただけますでしょうか。

API Cellar での実証 ~ 太陽光発電と蓄電池による電力供給 ~

末貞)
蓄電池含め省エネ法案およびPUEについては、我々も非常に重要だと思っています。先日発表をした「API Cellar」では、API Managementの仕組みをコンテナのモジュールデータセンターの中に入れ、全設備を含めてパックにし実証実験を開始しています。
API Cellar自体は、ハードウェア+ソフトウェアの構成でアプライアンスといわれるものをもう少し大きくした概念で、エネルギーに関わる部分も含めてサービスとして提供できるよう実証実験を行っています。分散化されたAPI Cellarのひとつを賄う電力量はどの程度必要なのか、太陽光発電による電力供給を実施している中で、どの程度この発電量を蓄電池に貯めることができ消費電力として活用できるか、など調査を行っています。

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API Cellar での実証 ~ セキュリティ・ガバナンスの観点での、選択肢の提供にむけて~

さらに、個人情報や重要な企業情報が常にIaaS上の他のサービス上で稼働していてよいのか、というテーマが我々の中にあります。企業としてもしくは自治体・国の仕組みとして、自分の敷地内の環境に情報を持っておく必要があるのでは、というのが分散から集中/集中から分散という流れで、分散型に戻ってくるのでと思っています。そうなった時にAPIのアクセスに対するセキュリティモデルや、ガバナンスについても、このAPI Cellarの中で対応できるよう取り組んでいます。これも企業や自治体が選ぶべき選択肢のひとつであり、リアルな環境の中で動かす部分・クラウドで事足りる部分、そこを選べる時代を作るために、API Cellarを発表し取り組んでいます。

< 第2部へ続く  こちらからご覧ください >


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左)
株式会社インターネットイニシアティブ
常務執行役員 基盤エンジニアリング本部長 電気通信設備統括管理者 山井 美和 氏

複数のIT企業での業務を経て19996月、株式会社インターネットイニシアティブ(IIJ)に入社。入社後に株式会社クロスウェイブコミュニケーションズへ出向し、広域LANサービスの企画やデータセンター建設に従事する。20046月にIIJへ帰任後は主にサポート部門やサービス設備の構築運用を指揮する。同時にIIJのデータセンター事業を統括し、外気空調によるコンテナ型データセンターや電力消費の効率化を実現したデータセンターを建設。20124月同社執行役員、20154月常務執行役員に就任。20207IIJエンジニアリング副社長を兼務し、IIJとの機能連携強化を推進し、20214月代表取締役社長に就任、現在に至る。

右)株式会社ブリスコラ  代表取締役  末貞 慶太郎

外資金融機関を経て、2000年よりIT業界にて、海外のハードウェアやEAIソフトウェアを販売。2008年より株式会社インターネットイニシアティブの事業企画担当として、松江のPUE1.1のコンテナデータセンターなど多数のプロジェクト立ち上げを担当。20106月株式会社ブリスコラを起業し、クラウドにフォーカスした戦略コンサルティングやIoTプラットフォームサービスの提供を開始。2015年日本で初めてAPIマネジメントのOSSツール「Kong」をベースにしたサブスクリプションサービスを展開。また米国Kong社(旧Mashape社)と世界初の代理店契約を締結。APIを活用した先進的なシステム導入実績を重ね現在に至る。

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