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【対談 第2部】 インターネットをベースにしたオープンAPIのこれから

株式会社インターネットイニシアティブ 常務執行役員 山井 美和氏

※第1部・第2部ともに、対談のテキスト原稿は、こちらのPDFでもご覧いただけます。

※第1部のコンテンツはこちらからご覧ください。

末貞)
会社設立から13年、私がIIJに在籍し、山井様にお世話になっていたのは約16年ほど前ですね。当初から時代も変わり、インターネットも当たり前になりさらに速度も速くなったことで、その上でできるビジネスを考え起業しました。IIJ在籍時にとても参考になった点がいくつかありました。ひとつはネットワークの在り方で、その中で「ピアリング(※3)」という概念にテクノロジーとしてもビジネスとしても触れることができ、非常に現在のAPIのビジネスに役立っています。また、Pull型の営業戦略も非常に新しく感じた点でもあります。さらに、常時SLA(※4)でお客様にサービス提供をしていたこともとても勉強になりました。

※3 ピアリング : peering 一対の通信機器同士やネットワーク同士が互いに相手を認識・承認し、相互に通信を行える状態にすること。
※4  SLA : Service Level Agreement  サービス品質保証/サービスレベル合意書。サービスを提供する事業者が契約者に対して、どの程度まで品質を保証できるかを明示したもの。

インターネット ~ ネットワークの変遷からみる今 ~

IIJ 山井氏)
「ピアリング」についてですが、そもそもインターネットは何が起きても自律的に動くネットワークを元に設計されています。これを学術系から商用に移行したのが米国で、それぞれのネットワークを構成しているキャリア同士をどのようにつなぐか、使う人たちがお互い対等に繋ぎあおう、という話で進んだものだと思います。それが「ピア Peer」のもとになっています。当初インターネットはIXにいくと皆が相互に繋ぎあいましょう、で始まったが、徐々に出入りするトラフィックの量で、繋ぎたい人・繋ぎたくない人が出てきている。それが時を経て、今の時代にきているということなのでしょう。

IIJのサービスプロバイダーとしての強み

IIJの強みというのは、同じ品質同じ使い方のできるものを24時間安定的に提供しているサービス事業者である、ということなのです。例えば電話が従量制から固定制に変わり、常に固定のコストでつながる状態ができるわけです。そういった品質が維持できるサービスを月額決まった金額で提供できている。これがお客様からの高評価につながります。その金額が競争の源泉にあるわけですが、ある一定以上の品質をある一定以上の価格で維持できていることが、IIJがサービスプロバイダーとして認知され、かつ利用されているひとつだと思っています。

API、これからの拡がり

末貞)
「ピアPeer」の話にあったように、インターネットをサービスで提供する際の考え方の中に、相互の通信があるから各国で様々な海外のサイトも閲覧でき、日本のサイトも海外で閲覧できる、このことをAPIの観点で考えてみると、本当にAPIが増えたときに同じような概念になるのではと思っています。
日本にあるAPIに海外からアクセスすることで、日本のサービスを海外でも使えるようにアプリケーションがひとつ統合してできていく、マッシュアップしていくという形ができてくると、ピアのような世界がAPIでできた時にAPI Gateway間がそのような形になるのでは、と思っているのです。

IIJ 山井氏)
同感です。昔、伝送路から始まってIPのレイヤーになり、さらにその上のアプリケーションに近づけば近づくほど、結局、どのレベルでデータやコンテンツをExchangeしているのか、ということになりますね。

API公開を推奨

末貞)
日本の企業の方がAPIを公開することに躊躇してはいけない、と思っています。まだ、APIも作っておらずデータも公開しない、という企業が多い中、マーケットに対しAPIを公開することを啓蒙していきたいと考えています。その際に、API 管理の製品を高い金額で提供してしまうと、さらにハードルを上げることになってしまう。そこで現在、高品質なサービスやソフトウェアをサブスクリプションとして提供しています

APIの標準化に向けて

IIJ 山井氏)
そこは「標準化」が大事だと思います。標準化されているからインターネットもこのように広がってきたし、インターネットを皆さんが使い新しいビジネスが多く生まれるわけです。
末貞)
APIを標準化するのがとても難しいのです。アプリケーションに近づけば近づくほど自由さが広がるため、バラバラな形のAPIができてくるのです。それを標準化するところを「OpenAPI Spec」という仕様が世界で標準になり始めており、その仕様が市民権を持った時に一気に標準化が広がるのではと思っています。

APIのブランド構築に向けて

末貞)
APIを一番わかりやすい状態でどんどん使っていっていただくために、企業側にもブランドやマーケティングを重要視しなければいけないと思っています。供給側の目線で皆さんに興味を持ってもらうために、ブランドをどう作っていくべきかを模索しています。
IIJ 山井氏)
少なくともいえるのはインターネットが世の中で何も考えずに使えるような状態になっている、それを支えているのが我々の役割です。その上でどのようなサービスが生まれるか、それは非常に楽しみにみているところです。新しいビジネスをどんどん作っている人たちがAPIを使ってつながりあう、そういった世界ができると良いですね。

高品質な「運用」に向けて

末貞)
ありがとうございます。あと「サービス」も重要と思っています。ブリスコラはソフトウェアやコンサルティングを提供することはできていますが、今後、SLAをひいて常にお客様に高品質で同じものを提供していく運用サービスに取り組んでいかなければなりません。何かアドバイスはございますか?
IIJ 山井氏)
アプリケーションレイヤーになればなるほど、ソフトウェアの自動化はやり易いと思いますので、ぜひ自動化に取組んでもらえたらと思います。
末貞)
そうですね。今の時代、AIもありますしデータ分析も当たり前になってきています。分析及び自動化に注力してやっていきたいと思います。

IIJのイズムを引き継ぎながら私なりに日本企業のAPIの戦略というところを広げて市場が大きくなるように、これからも頑張っていきます。

今回は、対談企画にご参加いただきまして、ありがとうございました。

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左)
株式会社インターネットイニシアティブ
常務執行役員 基盤エンジニアリング本部長 電気通信設備統括管理者 山井 美和(やまい よしかず)氏

複数のIT企業での業務を経て19996月、株式会社インターネットイニシアティブ(IIJ)に入社。入社後に株式会社クロスウェイブコミュニケーションズへ出向し、広域LANサービスの企画やデータセンター建設に従事する。20046月にIIJへ帰任後は主にサポート部門やサービス設備の構築運用を指揮する。同時にIIJのデータセンター事業を統括し、外気空調によるコンテナ型データセンターや電力消費の効率化を実現したデータセンターを建設。20124月同社執行役員、20154月常務執行役員に就任。20207IIJエンジニアリング副社長を兼務し、IIJとの機能連携強化を推進し、20214月代表取締役社長に就任、現在に至る。

右)株式会社ブリスコラ  代表取締役  末貞 慶太郎

外資金融機関を経て、2000年よりIT業界にて、海外のハードウェアやEAIソフトウェアを販売。2008年より株式会社インターネットイニシアティブの事業企画担当として、松江のPUE1.1のコンテナデータセンターなど多数のプロジェクト立ち上げを担当。20106月株式会社ブリスコラを起業し、クラウドにフォーカスした戦略コンサルティングやIoTプラットフォームサービスの提供を開始。2015年日本で初めてAPIマネジメントのOSSツール「Kong」をベースにしたサブスクリプションサービスを展開。また米国Kong社(旧Mashape社)と世界初の代理店契約を締結。APIを活用した先進的なシステム導入実績を重ね現在に至る。

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